【第1話】
人々を救った「隠岐のあごなし地蔵」
むかし、むかし、青野ヶ原の台地を上り、加西へとぬけていく街道沿いに一体のお地蔵さんが立っていました。このお地蔵さんは、長い石碑の上に刻まれており、石碑の下は旅人に道を示す道しるべとなっていました。旅人たちは、旅の無事を祈ってくれるこのお地蔵さんにいつも手を合せ感謝しておりました。
ある日、河合に住むひとりのおばあさんが、歯が痛くて苦しんでいると、夜中、枕もとにそのお地蔵さんが立たれて 「私は隠岐(島根県隠岐の島)からやってきた地蔵です。お参りに来れば治してあげましょう。」 と言われました。
次の朝、おばあさんは言われたとおりにお参りをすると、あれだけ痛かった歯が不思議にも治ってしまいました。
このことが村人たちに伝わり、歯痛を治す地蔵(あごの痛みをなくす地蔵)ということから、いつしか「あごなし地蔵」と呼ばれるようになりました。
ある晩、またあのお地蔵さんがおばあさんの枕もとに立たれて言われました。
「もっと世の中に出て、困っている人を助けてあげたい。七色のハッタイ粉を供えてくれたらもっと力がでるのだが・・・」。
おばあさんは、その話を村人たちに伝えました。村人たちは皆で相談し、河合を南北に抜ける大きな街道沿いへとお地蔵さんを移してまつりました。
するとどうでしょう。河合地区の流行り病がなくなるだけでなく、いろいろな病気や不幸を背負った人たちもたくさん救われました。
助けてもらった人たちは、お地蔵さんに心から感謝し、七色のハッタイ粉を供えたとのことです。
(七色のハッタイ粉とは、麦、米、栗、大豆、小豆、えんどう豆、そら豆を粉にして混ぜ、水でこねたものです。)
このお地蔵さまは、今も赤いよだれかけを幾重にもかけられ、地元の方々に大切にまつられています。
(新しいウィンドウで開いています。)